- 歌の意味
-
夏草が水面の上を覆って茂っている沼の水のように、行き場のない私の心であることよ。
- 鑑賞
-
巻第十 物名 462
詞書「交野」
夏草が上を覆うように茂っている沼の水のように、行き場のない私の心だなあ、と詠む歌である。四句の「ゆくかたの」に地名の「かたの(交野)」を詠み込んでいる。上の句の沼水の比喩が、流れ出ることのない心の閉塞感を描き出している。交野は河内国の地で、皇室の狩り場として知られた。
作者の「たたみね」は古今和歌集の撰者の一人である。三十六歌仙に数えられ、壬生忠見の父である。
初句「夏草の」は、夏草が、の意で、沼を覆う景を描き始める。
二句「上は茂れる」は、水面の上は茂っている、の意で、「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。
三句「沼水の」は、流れ出ることのない沼の水をいい、上の句が四句を導く序詞のはたらきをする。
四句「ゆくかたのなき」は、行き場のない、の意で、「かたの」に地名の「交野」が隠されている。
結句「わが心かな」は、わが心であることよ、と詠嘆して結ぶ。
かたの:「ゆくかたのなき」の中に詠み込まれた地名で、河内国の交野をいう
- 作者
-
壬生忠岑
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
あしひきの山辺にをれば白雲の いかにせよとかはるる時なき
- 次の歌
-
秋来れば月のかつらのみやはなる 光を花と散らすばかりを