春かすみなかし通ひ路なかりせば
秋来る雁は帰らざらまし
- 歌の意味
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春霞の中に通い路がなかったならば、秋にやって来た雁は、北へ帰らずにいただろうに。
- 鑑賞
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巻第十 物名 465
詞書「墨流し」
春霞の中に通い路がなかったなら、秋に来た雁は北へ帰らないだろうに、と詠む歌である。初句から二句にかけての「すみなかし」に題の「すみながし(墨流し)」を詠み込んでいる。墨流しは水面に墨を落として模様を作る遊びをいう。春に北へ帰る雁を、霞の中の通い路によって説明する機知の歌である。
作者の「しけはる」は在原滋春である。在原業平の次男で、「在次君」とも呼ばれた。
初句「春かすみ」は春の霞で、「すみ」から題の語が始まる。
二句「なかし通ひ路」は「中し通ひ路」で、霞の中に通う道、の意である。「し」は強意の副助詞で、初句と合わせた「すみなかし」に題の「墨流し」が隠されている。
三句「なかりせば」は、なかったならば、の意で、反実仮想の「せば」を用いる。
四句「秋来る雁は」は、秋にやって来た雁は、の意である。
結句「帰らざらまし」は三句の「せば」を受けて「まし」で結び、帰らないだろうに、と事実に反することを仮定する。
かよひぢ:行き来する道
すみながし:水面に墨を垂らして模様を作る遊び、「春かすみなかし」にまたがって詠み込まれる
- 作者
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在原滋春
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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花ごとに飽かず散らしし風なれば いくそばくわがうしとかは思ふ
- 次の歌
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流れいづる方だに見えぬ涙川 おきひむ時や底は知られむ