音にのみきくの白露夜はおきて
昼はおもひにあへず消ぬべし
- 歌の意味
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噂にばかり聞いている人を思って、菊の白露が夜は置き、昼は日に消えるように、私は夜は起きていて、昼は恋の思いの火に耐えきれずに消えてしまいそうだ。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 470
詞書「題しらず」
噂に聞くばかりでまだ逢ったこともない人への恋を、菊の上の白露になぞらえた歌である。夜に置いて昼に消える露の性質に、夜は眠れずに起きていて、昼は思いの火に身を焦がして消え入りそうになる自分の姿を重ねている。掛詞を幾重にも用いた技巧的な歌で、見ぬ恋の苦しさを繊細に表している。
作者の素性法師は僧正遍昭の子で、俗名を良岑玄利という。出家して雲林院や石上の良因院に住んだ。三十六歌仙の一人である。
初句「音にのみ」は、うわさにだけという意である。本巻の第四百七十三首、第四百八十二首の「音に聞きつつ」と同じく、評判を聞くだけで逢えない恋を表す語で、一連の見ぬ恋の主題を示している。
二句「きくの白露」の「きく」は、うわさを「聞く」と花の「菊」を掛けた掛詞である。聞く恋の嘆きが、秋の菊に置く白露の景へと移っていく。
三句「夜はおきて」の「おき」は、露が「置き」と、人が眠らずに「起き」を掛けた掛詞である。字余りの句で、夜通し起きている切なさがにじむ。
四句「昼はおもひに」の「おもひ」は、恋の「思ひ」に「火」を掛け、昼の「日」の光に露が消えることとも響き合う。露の縁語として「置く」「消ゆ」が一首を貫いている。
結句「あへず消ぬべし」は、耐えきれずに消えてしまいそうだの意で、露が消えることと、恋に命も消え入りそうな自分を重ねている。
きく:噂を聞く意と、花の菊を掛ける
おく:露が置く意と、人が起きる意を掛ける
おもひ:恋の思いの意と、火を掛ける
あふ:堪える、こらえる
く:消える。「消ぬ」は消えてしまう意
- 作者
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素性
- 出典
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