立ち帰りあはれとぞ思ふよそにても
人に心をおきつ白波
- 歌の意味
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沖の白波が寄せては返すように、繰り返し、しみじみといとしいと思う。遠く離れていても、あの人に心を置いてしまったのだから。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 474
詞書「題しらず」
遠く離れたままでも、相手に心を置いてきてしまった恋心を、沖から寄せては返す白波に託した歌である。何度も繰り返し相手をいとしく思う気持ちを、波の反復する動きで表している。結句を体言で止め、心を置いた相手のもとに打ち寄せる白波の余韻を残している。
作者の在原元方は在原業平の孫で、筑前守在原棟梁の子である。のち藤原国経の養子となった。古今和歌集巻頭の「年の内に春は来にけり」の歌の作者として知られる。
初句「立ち帰り」は、繰り返し、何度もの意で、波が寄せては返すさまを表す波の縁語でもある。
二句「あはれとぞ思ふ」の「あはれ」は、しみじみといとしいと思う気持ちである。「ぞ」は係助詞で「思ふ」と係り結びをなし、二句で切れる。
三句「よそにても」は、離れた所にいても、関わりのない間柄であってもの意である。
四句「人に心を」は、あの人に心をの意で、結句の「おき」へと続く。前歌の第四百七十三首に続き、隔てられたままの恋が詠まれている。
結句「おきつ白波」の「おき」は、心を「置き」と「沖」を掛けた掛詞で、「つ」は完了の助動詞と、「沖つ」の格助詞を兼ねる。体言止めで、白波の像に余情を託している。
たちかへる:繰り返す。波が寄せては返す
あはれ:しみじみとした情愛
よそ:離れた所、無関係な間柄
おき:心を置く意と、沖を掛ける
- 作者
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在原元方
- 出典
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古今和歌集
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音羽山音に聞きつつ逢坂の 関のこなたに年を経るかな
- 次の歌
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世の中はかくこそありけれ吹く風の 目に見ぬ人も恋しかりけり