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世の中はかくこそありけれ吹く風の
目に見ぬ人も恋しかりけり

歌の意味
男女の仲というものはこういうものだったのだ。吹く風のように目に見えない、逢ったこともない人までも恋しく思われることだ。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 475

詞書「題しらず」
 まだ一度も姿を見たことのない人を恋しく思う自分に気づき、恋とはこういうものだったのかと感じ入る歌である。目に見えない風を比喩に用い、姿の見えない相手に惹かれる不思議さを知的に表している。見ぬ恋を詠む本巻前半の流れの中で、その心理を端的にまとめた一首である。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の一人で、仮名序の筆者とされる。土佐守を務め、『土佐日記』を著した。三十六歌仙の一人である。

 初句「世の中は」の「世の中」は、ここでは男女の仲、恋愛の意である。
 二句「かくこそありけれ」は、こういうものであったのだの意である。「こそ」は係助詞で「けれ」と係り結びをなし、「けれ」は気づきの詠嘆を表す。二句で切れる。
 三句「吹く風の」は、吹く風のようにの意で、目に見えないものの比喩として四句を導く。本巻の第四百七十二首でも風が恋の頼りとして詠まれている。
 四句「目に見ぬ人も」は、まだ目で見たこともない人までもの意である。
 結句「恋しかりけり」の「けり」は、今初めて気づいた詠嘆を表す。二句の「ありけれ」と「けり」を重ね、発見の驚きを強めている。

よのなか:男女の仲
作者
紀貫之
出典
古今和歌集
前の歌
立ち帰りあはれとぞ思ふよそにても 人に心をおきつ白波
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見ずもあらず見もせぬ人の恋しくは あやなく今日やながめ暮らさむ