たよりにもあらぬ思ひのあやしきは
心を人につくるなりけり
- 歌の意味
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便りの使いでもない恋の思いが不思議なのは、心をあの人のもとへ届けてしまうことなのだった。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 480
詞書「題しらず」
手紙を運ぶ使いでもないのに、恋の思いがひとりでに心を相手のもとへ届けてしまう不思議さを詠んだ歌である。思いを使者に見立てる知的な発想で、自分の意思を超えて相手に向かってしまう恋心を表している。
作者の「もとかた」は在原元方である。在原業平の孫で、筑前守在原棟梁の子であり、のち藤原国経の養子となった。古今和歌集巻頭の「年の内に春は来にけり」の歌の作者として知られる。
初句「たよりにも」の「たより」は、音信を伝えるつて、使いの意である。本巻の第四百七十二首の「風ぞたよりの」と同じ語で、あちらは風を、こちらは思いを恋の伝え手として扱っている。
二句「あらぬ思ひの」は、使いでもない恋の思いがの意である。
三句「あやしきは」は、不思議なことにはの意で、四句以下でその内容を明かす構成になっている。
四句「心を人に」は、自分の心をあの人にの意である。
結句「つくるなりけり」の「つく」は、託して届ける、送り届けるの意である。「なりけり」は断定と気づきの詠嘆を表し、思いのはたらきに今さらながら驚く気持ちを示している。
たより:音信を伝えるつて、使い
つく:託して送り届ける
- 作者
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在原元方
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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山桜霞の間よりほのかにも 見てし人こそ恋しかりけれ
- 次の歌
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初雁のはつかに声を聞きしより 中空にのみ物を思ふかな