初雁のはつかに声を聞きしより
中空にのみ物を思ふかな
- 歌の意味
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初雁の声をほんのわずかに聞くように、あの人の声をかすかに聞いてからというもの、雁が空の中ほどを渡るように、上の空で物思いばかりしていることだ。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 481
詞書「題しらず」
相手の声をわずかに聞いただけで、心が宙に浮いたように落ち着かなくなった恋を詠んだ歌である。秋に初めて渡ってくる雁の声を序とし、空を渡る雁の姿から「中空」へと展開して、どっちつかずで落ち着かない心を表している。音の響きと景物の連想を巧みにつないだ一首である。
作者の「凡河内みつね」は凡河内躬恒である。古今和歌集の撰者の一人で、甲斐少目、和泉大掾などを務めた。三十六歌仙の一人で、紀貫之と並ぶ歌人として知られる。
初句「初雁の」は、その秋初めて渡ってくる雁のことで、同じ音の繰り返しで二句の「はつかに」を導く序詞である。
二句「はつかに声を」の「はつかに」は、わずかにの意である。本巻の第四百七十八首の「草のはつかに」と同じ語で、あちらはわずかに見た姿、こちらはわずかに聞いた声への恋を詠んでいる。
三句「聞きしより」は、聞いてからというものの意で、「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。
四句「中空にのみ」の「中空」は、空の中ほどの意と、心が落ち着かず上の空であるさまを重ねている。雁が空を渡ることと響き合う。
結句「物を思ふかな」は、物思いにふけることだの意で、「かな」は詠嘆の終助詞である。
はつかり:その秋初めて北から渡ってくる雁
なかぞら:空の中ほど。転じて、心が落ち着かず上の空であるさま
- 作者
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凡河内躬恒
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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たよりにもあらぬ思ひのあやしきは 心を人につくるなりけり
- 次の歌
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逢ふことは雲居はるかになる神の 音に聞きつつ恋ひわたるかな