古典和歌stream

夕暮れは雲のはたてに物ぞ思ふ
天つ空なる人を恋ふとて

歌の意味
夕暮れになると、雲の果てを眺めて物思いにふけることだ。空の彼方にいるような、手の届かない人を恋い慕うというので。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 484

詞書「題しらず」
 夕暮れの空を見上げ、雲の果てに向かって物思いにふける恋の歌である。天の空にいるような、手の届かない高貴な人を恋うゆえに、空の彼方を眺めずにはいられない心を詠んでいる。夕暮れと恋の結びつきを印象的に示した歌として名高く、夕暮れの雲を恋の象徴とする後代の歌にも影響を与えた。

 初句「夕暮れは」は、夕暮れになるとの意で、恋人を待ち、恋しさのつのる時刻を示す。本巻の第五百十五首「ひも夕暮れに」、第五百四十六首「秋の夕べ」も、夕暮れに恋しさがつのることを詠んでいる。
 二句「雲のはたてに」の「はたて」は、果て、端の意で、雲の果てる空の彼方を眺めることをいう。旗手の意とし、旗のようにたなびく雲の端と解する説もある。
 三句「物ぞ思ふ」は、物思いにふけるの意で、「ぞ」は係助詞で「思ふ」と係り結びをなす。三句で切れ、四句以下で理由を示す倒置の構成になっている。
 四句「天つ空なる」は、天の空にいるの意で、身分が高く手の届かない相手をたとえている。本巻の第四百八十八首も恋を「むなしき空」に結びつけて詠んでいる。
 結句「人を恋ふとて」は、人を恋い慕うというのでの意で、三句の物思いの理由を示している。

はたて:果て、端
あまつそら:天の空。転じて、手の届かない高い身分
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
片糸をこなたかなたに縒りかけて あはずは何を玉の緒にせむ
次の歌
刈り菰の思ひ乱れて我恋ふと 妹知るらめや人し告げずは