刈り菰の思ひ乱れて我恋ふと
妹知るらめや人し告げずは
- 歌の意味
-
刈り取った真菰が乱れるように、心乱れて私が恋い慕っていると、あの子は知っているだろうか。誰かが告げなければ、知るはずもない。
- 鑑賞
-
巻第十一 恋歌一 485
詞書「題しらず」
刈り取られて乱れた真菰のように思い乱れて恋していることを、相手は知らないだろうと嘆く歌である。胸の内に秘めた恋は、誰かが伝えてくれなければ届かないというもどかしさが詠まれている。「妹」という呼びかけや枕詞の用い方に、万葉集の歌に通じる古風な調べがある。
初句「刈り菰の」は、刈り取った真菰が乱れやすいことから「乱る」にかかる枕詞である。
二句「思ひ乱れて」は、心が乱れての意である。本巻の第五百十四首にも「思ひ乱れて」の句があり、乱れる恋心を共有している。
三句「我恋ふと」は、私が恋い慕っているとの意である。
四句「妹知るらめや」の「妹」は、男性が恋人や妻を親しんで呼ぶ語である。「らめや」は現在推量の助動詞「らむ」の已然形に反語の「や」がついた形で、知っているだろうか、知るまいの意となる。四句で切れる倒置の構成である。
結句「人し告げずは」の「し」は強意の副助詞で、「ずは」は、もし〜ないならばの意である。誰かが告げなければという条件を後置し、四句の反語の理由を示している。
かりこも:刈り取った真菰。「乱る」にかかる枕詞
いも:男性が恋人や妻を親しんで呼ぶ語
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
夕暮れは雲のはたてに物ぞ思ふ 天つ空なる人を恋ふとて
- 次の歌
-
つれもなき人をやねたく白露の おくとは嘆き寝とはしのばむ