駿河なる田子の浦波立たぬ日は
あれども君を恋ひぬ日はなし
- 歌の意味
-
駿河の国にある田子の浦の波が立たない日はあっても、あなたを恋しく思わない日はない。
- 鑑賞
-
巻第十一 恋歌一 489
詞書「題しらず」
駿河国の田子の浦に寄せる波を引き合いに、波の立たない日はあっても、あなたを恋しく思わない日はないと詠む歌である。絶えず寄せる浦波よりもなお絶え間のない恋心を、比較によって強調している。素朴で力強い表現に、古い歌謡の調べが感じられる。
初句「駿河なる」は、駿河国にあるの意である。本巻の第五百三十四首では「するがなる富士の山」と同じ駿河が詠まれている。
二句「田子の浦波」は、駿河国の歌枕である田子の浦に寄せる波のことである。
三句「立たぬ日は」は、波が立たない日はの意である。
四句「あれども君を」は、あっても、あなたをの意で、波と自分の恋とを対比する転換点になっている。
結句「恋ひぬ日はなし」は、恋しく思わない日はないの意である。本巻の第四百八十七首の結句「かけぬ日はなし」と同じ構文で、日々絶えることのない恋を詠む歌として並べられている。
たごのうら:駿河国の海岸。歌枕
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
わが恋はむなしき空に満ちぬらし 思ひやれども行く方もなし
- 次の歌
-
夕月夜さすや岡辺の松の葉の いつともわかぬ恋もするかな