思ひ出づるときはの山の岩つつじ
いはねばこそあれ恋しきものを
- 歌の意味
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あの人を思い出す時はいつも、常盤の山の岩つつじの「いは」ではないが、口に出して言わないだけで、本当は恋しくてたまらないのに。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 495
詞書「題しらず」
口に出して言わないだけで、心の中では恋しくてたまらないという忍ぶ恋の歌である。常盤山の岩つつじを序とし、「岩」から同じ音の「言は」を導いて、秘めた思いを表している。岩つつじの紅の色には、表に出せない恋の情熱も感じられる。
初句「思ひ出づる」は、思い出すの意で、二句の「とき」へと続く。
二句「ときはの山の」の「ときは」は、思い出す「時は」と、山の名の「常盤」を掛けた掛詞である。常盤山は山城国の歌枕とされる。
三句「岩つつじ」は、岩の間に咲くつつじで、同じ音の繰り返しで四句の「いはねば」を導いている。初句からここまでが序詞である。
四句「いはねばこそあれ」は、言わないからこそ知られずにいるがの意で、「こそ」は係助詞で「あれ」と係り結びをなし、逆接で下に続く。本巻の第五百三十七首も「岩清水」から「いはで」を導く同じ趣向である。
結句「恋しきものを」の「ものを」は逆接の詠嘆を表す終助詞で、本当は恋しいのにの意である。
ときは:思い出す時はの意と、山の名の常盤を掛ける
いはつつじ:岩の間に咲くつつじ
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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山高み下行く水の下にのみ 流れて恋ひむ恋ひは死ぬとも
- 次の歌
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人知れず思へば苦し紅の 末摘花の色に出でなむ