種しあれば岩にも松は生ひにけり
恋をし恋ひば逢はざらめやは
- 歌の意味
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種さえあれば、岩の上にも松は生えてくるのだ。ひたすら恋い続けていれば、逢えないことがあろうか、いや、きっと逢える。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 512
詞書「題しらず」
種があれば岩の上にさえ松が生えるように、ひたむきに恋い続ければ必ず逢えるはずだと自らを励ます歌である。忍ぶ恋や叶わぬ恋を嘆く歌の多い本巻の中で、恋の成就を信じる前向きな調子が際立っている。自然の力強い生命を引き合いに出した、明快で力強い一首である。
初句「種しあれば」の「し」は強意の副助詞で、種さえあればの意である。
二句「岩にも松は」は、岩の上にさえ松はの意で、生育の難しい場所をあえて示している。
三句「生ひにけり」は、生えてきたのだの意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。三句で切れ、上の句で自然の道理を示している。
四句「恋をし恋ひば」の「し」は強意で、ひたすら恋い続けたならばの意である。「恋」の語を重ねて思いの強さを表している。
結句「逢はざらめやは」の「やは」は反語で、逢えないことがあろうか、いや逢えるの意となる。上の句の自然の道理を下の句の恋に当てはめる構成である。
おふ:草木が生える
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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涙川なに水上を尋ねけむ 物思ふ時のわが身なりけり
- 次の歌
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朝な朝な立つ川霧の空にのみ うきて思ひのある世なりけり