忘らるる時しなければあしたづの
思ひ乱れて音をのみぞ泣く
- 歌の意味
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あの人を忘れられる時がないので、葦辺の鶴が乱れ鳴くように、思い乱れて声をあげて泣いてばかりいる。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 514
詞書「題しらず」
恋しい人を片時も忘れられず、葦辺の鶴のように思い乱れて声をあげて泣くばかりだと詠む歌である。葦の間で鳴き騒ぐ鶴の姿を、恋に乱れて泣く自分の姿に重ねている。鶴の鳴き声の悲しげな響きが、恋の嘆きの深さを印象づけている。
初句「忘らるる」の「るる」は可能の助動詞「る」の連体形で、忘れることのできるの意である。
二句「時しなければ」の「し」は強意の副助詞で、時がないのでの意である。
三句「あしたづの」は、葦辺にいる鶴のことで、鶴が乱れ鳴くことから四句の「思ひ乱れて」にかかる。
四句「思ひ乱れて」は、心が乱れての意である。本巻の第四百八十五首にも同じ句があり、乱れる恋心を共有している。
結句「音をのみぞ泣く」は、声をあげて泣いてばかりいるの意で、「ぞ」は係助詞で「泣く」と係り結びをなす。鶴の鳴き声と人の泣き声を重ねている。本巻の第五百三十六首の「音のみ泣くらむ」も、鳥の声に恋の泣き声を重ねている。
あしたづ:葦辺にいる鶴
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
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朝な朝な立つ川霧の空にのみ うきて思ひのある世なりけり
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唐衣ひも夕暮れになる時は 返す返すぞ人は恋しき