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唐衣ひも夕暮れになる時は
返す返すぞ人は恋しき

歌の意味
唐衣の紐を結ぶではないが、日も夕暮れになる時には、衣を裏返すように、繰り返し繰り返しあの人が恋しく思われる。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 515

詞書「題しらず」
 夕暮れになると、衣を返すように繰り返し恋人が恋しくなると詠む歌である。「唐衣」から「紐」「結ふ」「返す」と衣の縁語を連ね、夕暮れ時につのる恋しさを技巧的に表している。衣を裏返して寝ると恋人を夢に見るという俗信も、「返す返す」の語に響いているとされる。

 初句「唐衣」は、中国風の美しい衣のことで、衣にかかわる「紐」「返す」などを導く枕詞の働きをしている。
 二句「ひも夕暮れに」の「ひも」は、衣の「紐」と、「日も」を掛けた掛詞である。また「ゆふ」には紐を「結ふ」の意が響き、「夕暮れ」と重なっている。本巻の第四百八十四首の「夕暮れは」と同じく、夕暮れにつのる恋しさを詠んでいる。
 三句「なる時は」は、なる時にはの意である。
 四句「返す返すぞ」は、繰り返し繰り返しの意で、衣を「返す」ことを響かせている。「ぞ」は係助詞で結句の連体形「恋しき」と係り結びをなす。「唐衣」「紐」「結ふ」「返す」は衣の縁語である。
 結句「人は恋しき」は、あの人が恋しいの意で、連体形で結んで余情を残している。

からころも:中国風の美しい衣。衣にかかわる語を導く
ひも:衣の紐の意と、日もの意を掛ける
ゆふ:紐を結ぶ意を、夕暮れの「夕」に響かせる
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
忘らるる時しなければあしたづの 思ひ乱れて音をのみぞ泣く
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宵々に枕定めむ方もなし いかに寝し夜か夢に見えけむ