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恋しきに命を替ふるものならば
死にはやすくぞあるべかりける

歌の意味
恋しさと引き替えに命を差し出せるものならば、死ぬことはたやすいはずだったのに。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 517

詞書「題しらず」
 恋しさから逃れられるなら命と引き替えにしてもよいが、そうもいかないと嘆く歌である。死によって恋の苦しみを終わらせることさえ許されないという、恋の苦しみの深さを逆説的に表している。次歌の第五百十八首とともに、恋と死を結びつけた歌が並んでいる。

 初句「恋しきに」は、恋しさにの意で、恋しさと命とを引き替えにする対象として示している。
 二句「命を替ふる」は、命を引き替えにするの意である。
 三句「ものならば」は、ものであるならばの意で、仮定を表す。
 四句「死にはやすくぞ」は、死ぬことはたやすくの意で、「ぞ」は係助詞で結句の「ける」と係り結びをなす。
 結句「あるべかりける」は、あるはずだったのにの意で、実際にはそうではないという反実の嘆きを込めている。

かふ:引き替える、交換する
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
宵々に枕定めむ方もなし いかに寝し夜か夢に見えけむ
次の歌
人の身もならはしものを逢はずして いざ試みむ恋ひや死ぬると