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忍ぶれば苦しきものを人知れず
思ふてふこと誰に語らむ

歌の意味
こらえ忍んでいると苦しいものなのに、人知れずあの人を思っているということを、いったい誰に語ればよいのだろうか。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 519

詞書「題しらず」
 恋を隠し続ける苦しさに耐えかねながらも、それを打ち明ける相手さえいないと嘆く歌である。忍ぶ苦しさと、語る相手のいない孤独が二重に重なり、忍ぶ恋の閉ざされた心情が表されている。

 初句「忍ぶれば」は、こらえ隠していると、の意である。
 二句「苦しきものを」は、苦しいものなのにの意で、「ものを」は逆接を表す。本巻の第四百九十六首の「人知れず思へば苦し」と同じく、忍ぶ恋の苦しさを詠んでいる。
 三句「人知れず」は、人に知られずにの意である。
 四句「思ふてふこと」の「てふ」は「といふ」がつまった形で、思っているということの意である。
 結句「誰に語らむ」は、誰に語ればよいのだろうかの意で、語る相手もいない孤独を表している。

しのぶ:こらえる、人に知られないように隠す
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
人の身もならはしものを逢はずして いざ試みむ恋ひや死ぬると
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来む世にもはやなりななむ目の前に つれなき人を昔と思はむ