人を思ふ心は我にあらねばや
身の惑ふだに知られざるらむ
- 歌の意味
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あの人を思う心は、もう私のもとにはないからだろうか。わが身が恋に迷っていることさえ、自分でわからないのは。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 523
詞書「題しらず」
恋する心が相手のもとへ行ってしまい、自分の中にないからか、わが身が迷っていることさえ自分でわからないと詠む歌である。心と身を切り離してとらえる知的な発想で、恋に我を失った状態を表している。次歌の第五百二十四首も「惑ふ夢路」と、惑う恋の心が続けて詠まれている。
初句「人を思ふ」は、あの人を恋い慕うの意で、字余りの句である。
二句「心は我に」は、心は私のもとにはの意である。
三句「あらねばや」は、ないからであろうかの意で、「や」は係助詞で疑問を表し、結句の「らむ」と係り結びをなす。
四句「身の惑ふだに」は、わが身が迷っていることさえの意で、「だに」は、〜さえの意である。
結句「知られざるらむ」の「れ」は可能の助動詞「る」の未然形で、わからないのだろうかの意である。心が離れたために身の迷いにも気づけないという理屈で、恋の惑いを表している。
まどふ:迷う、心が乱れる
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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行く水に数書くよりもはかなきは 思はぬ人を思ふなりけり
- 次の歌
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思ひやる境はるかになりやする 惑ふ夢路に逢ふ人のなき