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涙川枕流るるうき寝には
夢もさだかに見えずぞありける

歌の意味
涙の川が枕を流れるほどの、つらく浮いたような寝覚めがちな寝方では、夢さえもはっきりとは見えなかったのだった。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 527

詞書「題しらず」
 涙が川となって枕を流すほど泣きながら寝る夜は、せめて夢で逢おうとしても、夢さえはっきり見えないと嘆く歌である。涙の多さを川にたとえる誇張と、「浮き寝」に「憂き寝」を掛けた技巧で、夢の中でさえ恋人に逢えない悲しみを表している。本巻の第五百十六首から続く夢の歌を締めくくる一首である。

 初句「涙川」は、涙が川のように流れることをたとえた語で、本巻の第五百十一首と同じ初句である。
 二句「枕流るる」は、枕を涙が流れるほどの意で、涙の多さを誇張している。
 三句「うき寝には」の「うき」は、涙の川に「浮き」と、つらい意の「憂き」を掛けた掛詞である。「浮き寝」は水鳥が水に浮いて寝ることで、落ち着かない寝方の意も持つ。
 四句「夢もさだかに」は、夢さえもはっきりとの意である。
 結句「見えずぞありける」は、見えなかったのだったの意で、「ぞ」は係助詞で「ける」と係り結びをなす。

なみだがは:涙が川のように多く流れることのたとえ
うきね:水に浮いて寝る意と、つらい思いで寝る意を掛ける
さだかなり:はっきりしている
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
恋ひ死ねとするわざならしむばたまの 夜はすがらに夢に見えつつ
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恋すればわが身は影となりにけり さりとて人に添はぬものゆゑ