人知れぬおもひを常にするがなる
富士の山こそわが身なりけれ
- 歌の意味
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人に知られない恋の思いの火を、いつも燃やしている駿河の国の富士の山こそ、私自身の姿なのだった。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 534
詞書「題しらず」
人知れず恋の思いの火を燃やし続ける自分を、噴煙を上げる駿河の富士山にたとえた歌である。「思ひ」に「火」を、「する」に「駿河」を掛け、内に火を秘めた富士の山と、胸に恋の炎を秘めた自分とを重ねている。当時の富士山は噴煙を上げる活火山として知られ、恋の火を象徴する景物として好まれた。
初句「人知れぬ」は、人に知られないの意である。本巻の第五百六首も同じ句で始まっている。
二句「おもひを常に」の「おもひ」は、恋の「思ひ」に「火」を掛けた掛詞で、富士の噴火の火と響き合う。
三句「するがなる」の「する」は、思いを「する」と、国名の「駿河」を掛けた掛詞である。本巻の第四百八十九首も「駿河なる」で始まっている。
四句「富士の山こそ」は、駿河国の富士山のことで、「こそ」は係助詞で結句の「けれ」と係り結びをなす。
結句「わが身なりけれ」は、私自身なのだったの意で、「けれ」は気づきの詠嘆を表す。本巻の第五百十一首の結句「わが身なりけり」と表現が通じ、恋の源が自分自身にあるという発見が共通している。
おもひ:恋の思いの意と、火を掛ける
する:思いをする意と、国名の駿河を掛ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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葦鴨の騒ぐ入江の白波の 知らずや人をかく恋ひむとは
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飛ぶ鳥の声も聞こえぬ奥山の 深き心を人は知らなむ