うちわびて呼ばはむ声に山彦の
答へぬ山はあらじとぞ思ふ
- 歌の意味
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恋に思い悩んで、あの人の名を呼び続ける声に、山彦が答えない山はないだろうと思う。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 539
詞書「題しらず」
恋に悩み疲れて相手の名を呼び続ければ、どの山の山彦も答えてくれるだろうと詠む歌である。山彦は答えてくれても、肝心の相手からは答えがないという皮肉が、言外に込められている。呼びかけても応えのない恋の寂しさを、山にこだまする声に託している。
初句「うちわびて」の「わぶ」は、思い悩む、つらく思うの意で、「うち」は語調を整える接頭語である。
二句「呼ばはむ声に」の「呼ばふ」は、呼び続けるの意で、恋しい人の名を呼ぶ声をいう。
三句「山彦の」は、山で声が反響するこだまのことである。本巻の第五百二十一首も山彦を詠み、冷たい相手を恋うて山彦が答えるほど嘆いたと詠んでいる。
四句「答へぬ山は」は、答えない山はの意である。
結句「あらじとぞ思ふ」は、ないだろうと思うの意で、「じ」は打消しの推量、「ぞ」は係助詞で「思ふ」と係り結びをなす。山は必ず答えるのに相手は答えないという対比が、言外に込められている。
わぶ:思い悩む、つらく思う
よばふ:呼び続ける
やまびこ:山で声が反響するこだま
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
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浮草の上は茂れる淵なれや 深き心を知る人のなき
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心がへするものにもが片恋は 苦しきものと人に知らせむ