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春立てば消ゆる氷の残りなく
君が心は我に解けなむ

歌の意味
立春になると消えていく氷が跡形もなくなるように、あなたの心も残らず私に打ち解けてほしい。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 542

詞書「題しらず」
 春が来て氷がすっかり解けるように、相手の心も残らず自分に打ち解けてほしいと願う歌である。かたくなな相手の心を冬の氷に、それが解けることを春の訪れにたとえ、恋の成就への期待を明るく表している。ここから本巻の終わりに向けて、春、夏、秋、冬と季節の景物に託した恋の歌が順に並べられている。

 初句「春立てば」は、立春になるとの意である。本巻の終盤はこの春の歌に始まり、夏の蝉と蛍、秋の露や稲妻、冬の雪へと、四季の順に景物が配列されている。
 二句「消ゆる氷の」は、解けて消えていく氷のの意である。
 三句「残りなく」は、残らずの意で、初句からここまでが、氷が跡形もなく解けることを示して結句の「解け」を導く序の働きをしている。
 四句「君が心は」は、あなたの心はの意で、冬の氷のようにかたくなな相手の心をたとえている。
 結句「我に解けなむ」の「解く」は、氷が解ける意と、心が打ち解ける意を重ねている。「なむ」は他に対する願望を表す終助詞で、解けてほしいの意である。

とく:氷が解ける。心が打ち解ける
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
よそにして恋ふれば苦し入れ紐の 同じ心にいざ結びてむ
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明けたてば蝉のをりはへ鳴き暮らし 夜は蛍の燃えこそわたれ