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明けたてば蝉のをりはへ鳴き暮らし
夜は蛍の燃えこそわたれ

歌の意味
夜が明けると、蝉のように一日中ずっと泣き暮らし、夜になると蛍のように恋の思いに燃え続けている。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 543

詞書「題しらず」
 昼は蝉のように泣き暮らし、夜は蛍のように恋に燃え続けると、夏の虫に託して昼夜の恋の苦しみを詠んだ歌である。昼の蝉と夜の蛍、声と光を対にした構成が鮮やかで、一日中絶えることのない恋の思いを表している。前歌の春に続き、夏の景物で恋を詠んでいる。

 初句「明けたてば」は、夜が明けるとの意である。
 二句「蝉のをりはへ」の「をりはへ」は、ずっと引き続いての意で、蝉が長く鳴き続けるさまを表している。
 三句「鳴き暮らし」は、一日中泣いて過ごしの意で、蝉の「鳴く」と人の「泣く」を重ねている。
 四句「夜は蛍の」は、夜は蛍のようにの意で、初句の「明けたてば」と対をなし、昼の蝉と夜の蛍を対比している。
 結句「燃えこそわたれ」は、燃え続けているの意で、「こそ」は係助詞で「わたれ」と係り結びをなす。蛍の光を恋の火にたとえている。次歌の第五百四十四首も夏の虫と恋の火を詠んでいる。

をりはふ:ずっと引き続ける
なきくらす:泣いて一日を過ごす
わたる:ずっと〜し続ける
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
春立てば消ゆる氷の残りなく 君が心は我に解けなむ
次の歌
夏虫の身をいたづらになすことも ひとつおもひによりてなりけり