奥山の菅の根しのぎ降る雪の
消ぬとか言はむ恋のしげきに
- 歌の意味
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奥山の菅の根を押し伏せて降り積もる雪が消えるように、私も消え入ってしまいそうだと言おうか。恋の思いがあまりに絶え間ないので。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 551
詞書「題しらず」
奥深い山で菅の根を押し伏せるように降り積もる雪を序とし、絶え間ない恋の思いに身も消え入りそうだと詠む歌である。重く降り積もる雪の景が、胸に積もる恋の重さを象徴している。万葉集巻八の「高山の菅の葉しのぎ降る雪の消ぬとか言はむ恋の繁けく」と同じ歌の異伝とみられ、古い歌謡の調べを伝えている。
本巻の巻末に置かれた歌で、巻頭の第四百六十九首が夏の郭公から恋の始まりの惑いを詠んだのに対し、冬の雪で消え入りそうな恋の重さを詠んで巻を閉じている。本巻の第五百四十二首から続いた春夏秋冬の配列も、この雪の歌で結ばれている。
なお本文の二句は「管のね」とあるが、読み仮名の行は「すかのね」であり、「管」は「菅」の誤りとみられる。ここでは読み仮名の行に従い「菅」と表記する。
初句「奥山の」は、人里離れた深い山のことで、雪深い景を示している。本巻の第五百三十五首も「奥山の」で始まり、心の深さを山の深さにたとえている。
二句「菅の根しのぎ」の「菅」は、山野に生える草で、「しのぐ」は押し伏せる、押さえつけるの意である。
三句「降る雪の」は、降り積もる雪のことで、初句からここまでが四句の「消ぬ」を導く序詞である。前歌の第五百五十首の「淡雪」とともに、巻末を雪の歌で結んでいる。
四句「消ぬとか言はむ」は、消えてしまったと言おうかの意で、雪が消えることと、恋に身が消え入ることを重ねている。「か」は係助詞で疑問を表し、「む」と係り結びをなす。本巻の第四百七十首の「消ぬべし」と同じく、恋に消え入る身を詠んでいる。
結句「恋のしげきに」は、恋の思いが絶え間ないのでの意で、四句の理由を後から示す倒置の構成である。前歌の結句「しげきころかな」と語を共有し、巻頭歌の結句「恋もするかな」に始まった恋の巻を、絶え間ない恋の嘆きで結んでいる。
すが:山野に生える草。菅
しのぐ:押し伏せる、押さえつける
く:消える。「消ぬ」は消えてしまう意
しげし:数が多い、絶え間がない
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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淡雪のたまればかてに砕けつつ わが物思ひのしげきころかな
- 次の歌
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思ひつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを