いとせめて恋しき時はむばたまの
夜の衣を返してぞ着る
- 歌の意味
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どうしようもなく恋しい時には、夜の衣を裏返して着て寝るのだ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 554
詞書「題しらず」
たまらなく恋しい時には、夜着を裏返して着て寝ると詠む歌である。夜の衣を裏返して着ると恋しい人を夢に見られるという当時の俗信を踏まえ、せめて夢で逢いたいという切実な願いを、具体的なしぐさによって表している。夢に逢う喜び、夢を頼む心に続き、夢を自ら呼び寄せようとする行為へと進む、小町の夢の歌の一連の三首目である。
作者の小野小町は、平安時代前期の歌人である。六歌仙、三十六歌仙の一人で、仁明天皇の頃に宮廷に仕えたとされるが、出自や経歴には不明な点が多い。
なお本文の三句は「むは玉の」とあり、読み仮名の行の「うはたまの」と一致しない。ここでは本文の表記に従い「むばたまの」とした。
初句「いとせめて」 「いと」は程度のはなはだしさ、「せめて」はひたすら、切実にの意で、恋しさが極まった状態を強く言い起こす。
二句「恋しき時は」 係助詞「は」で、そのような時にはと条件を取り立てる。
三句「むばたまの」 「むばたまの」は「夜」「黒」などにかかる枕詞で、「ぬばたまの」「うばたまの」とも言う。夜の闇の深さを添えて四句を導く。
四句「夜の衣を」 「夜の衣」は寝る時に着る衣、夜着のことである。これを裏返して着ると恋しい人を夢に見るという俗信がある。
結句「返してぞ着る」 係助詞「ぞ」を受けて連体形「着る」で結ぶ係り結びで、裏返して着ることを強調する。前二首が夢を受け身に待つのに対し、この歌では自ら夢を招こうとしており、一連の中で心情が深まっていく。
むばたまの:「夜」「黒」などにかかる枕詞
よるのころも:夜寝る時に着る衣、夜着
- 作者
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小野小町
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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うたた寝に恋しき人を見てしより 夢てふものは頼みそめてき
- 次の歌
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秋風の身に寒ければつれもなき 人をぞ頼む暮るる夜ごとに