古典和歌stream

秋風の身に寒ければつれもなき
人をぞ頼む暮るる夜ごとに

歌の意味
秋風が身にしみて寒いので、つれない人であるのに、その人の訪れをあてにしてしまう。日が暮れる夜ごとに。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 555

詞書「題しらず」
 秋風が身に寒く感じられるので、冷淡な相手と知りながら、日が暮れるたびにその人の訪れを頼みにしてしまうと詠む歌である。秋風の寒さと独り寝の寂しさを重ね、望みのない恋にすがる心を描いている。待つ身の歌で、女の立場に立って詠んだものと解されている。
 作者の素性法師は、僧正遍昭の子で、俗名を良岑玄利という。出家して雲林院に住み、のち大和の石上の良因院に移った。三十六歌仙の一人である。

 初句「秋風の」 秋風は身にしみる寒さと、「秋」に「飽き」を響かせて恋の衰えを連想させる景物として恋歌によく用いられる。前の三首の夢の歌から、季節の景物を詠み込む歌へと移る。
 二句「身に寒ければ」 已然形に「ば」が付いた確定条件で、身に寒いのでの意である。
 三句「つれもなき」 「つれなし」は冷淡である、そっけないの意で、相手の心が自分に向いていないことを示す。
 四句「人をぞ頼む」 係助詞「ぞ」を受けて連体形「頼む」で結ぶ係り結びで、つれない人と知りながらなお頼みにする矛盾を強調する。ここで句切れとなり、結句と倒置の関係にある。
 結句「暮るる夜ごとに」 倒置により、頼む時を後から示す。日が暮れるたびに繰り返される期待と失望が余情として残る。

つれなし:冷淡である、そっけない
たのむ:あてにする、期待する
作者
素性法師
出典
古今和歌集
前の歌
いとせめて恋しき時はむばたまの 夜の衣を返してぞ着る
次の歌
包めども袖にたまらぬ白玉は 人を見ぬ目の涙なりけり