包めども袖にたまらぬ白玉は
人を見ぬ目の涙なりけり
- 歌の意味
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包んでも袖にとどまらない白玉は、あなたに逢えない私の目からこぼれる涙なのだった。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 556
詞書「下つ出雲寺に人のわざしける日、真静法師の導師にて言へりけることを歌によみて小野小町がもとにつかはしける」
包み隠そうとしても袖に収まらずこぼれ落ちる白玉は、あなたに逢えない私の目の涙であったと詠み、小野小町に贈った歌である。詞書によれば、下出雲寺で法事が営まれた日に、導師の真静法師が説法で述べた言葉を歌に詠み込んだものという。衣の裏に縫い込まれた宝珠の譬えを説く法華経の説話を踏まえるとされ、その「玉」を恋の涙に転じたところに機知がある。次歌の小町の返しと贈答をなす。
作者の「あへのきよゆきの朝臣」は安倍清行である。平安時代前期の官人で、大納言安倍安仁の子。陸奥守などを歴任し、従四位上に至った。
初句「包めども」 逆接の「ども」で、人目を憚って恋心を包み隠そうとしてもの意を表す。
二句「袖にたまらぬ」 「たまる」は留まる意で、次の「白玉」の「玉」と音を響かせる。袖に留めておけずにこぼれ落ちる様子である。
三句「白玉は」 「白玉」は真珠のことで、涙の粒の見立てとして用いられる。説法に語られた宝珠を踏まえた語と解される。
四句「人を見ぬ目の」 恋しい人に逢えない目の意で、「見る」は逢う、契るの意を含む。
結句「涙なりけり」 「けり」は気づきの詠嘆で、白玉と見えたものは実は涙であったと種明かしをして結ぶ。本巻の第五百九十九首でも涙が白玉に見立てられており、涙を玉と見る趣向が巻中で繰り返される。
わざ:仏事、法事
だうし:法会で中心となって説法などを行う僧
しらたま:白い玉、真珠
- 作者
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安倍清行
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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秋風の身に寒ければつれもなき 人をぞ頼む暮るる夜ごとに
- 次の歌
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おろかなる涙ぞ袖に玉はなす 我はせきあへずたぎつ瀬なれば