恋ひわびてうち寝る中に行き通ふ
夢の直路はうつつならなむ
- 歌の意味
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恋しさに思い悩んでふと寝入る間に行き来する夢の中のまっすぐな道は、どうか現実のものであってほしい。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 558
詞書「寛平御時后の宮の歌合の歌」
恋に思い悩んで寝入ったわずかな間に、恋しい人のもとへ通う夢の中の近道が、いっそ現実のものであってほしいと願う歌である。夢でなら人目も隔たりもなく真っすぐに逢いに行けるのに、という思いが込められている。宇多天皇の時代に、母后の班子女王の御所で催された寛平御時后宮歌合で詠まれた歌で、本巻ではここから同歌合の歌がまとまって並ぶ。
作者の「藤原としゆきの朝臣」は藤原敏行である。平安時代前期の歌人で、陸奥出羽按察使藤原富士麻呂の子。蔵人頭、右兵衛督などを務めた。書の名手としても知られ、三十六歌仙の一人である。
初句「恋ひわびて」 「恋ひわぶ」は恋しさに思い悩む、恋に苦しむの意である。
二句「うち寝る中に」 「うち」は軽く添える接頭語で、ふと寝入る間にの意である。
三句「行き通ふ」 夢の中で恋しい人のもとへ行き来することを言い、四句の「夢の直路」を修飾する。
四句「夢の直路は」 「直路」はまっすぐな近道のことで、夢の中では障りなく相手のもとへ行ける道を指す。次歌の第五百五十九首の「夢の通ひ路」と対応し、同じ作者の二首が夢の道を詠んで並ぶ。
結句「うつつならなむ」 「うつつ」は現実、「なむ」は他に対する願望の終助詞で、現実であってほしいと結ぶ。本巻冒頭の第五百五十二首が夢と知っていれば覚めなかったと詠んだのとは逆に、夢を現実に変えたいと願う構図になっている。
こひわぶ:恋しさに思い悩む
ただぢ:まっすぐな近道
うつつ:現実
- 作者
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藤原敏行
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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おろかなる涙ぞ袖に玉はなす 我はせきあへずたぎつ瀬なれば
- 次の歌
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住の江の岸に寄る波よるさへや 夢の通ひ路人目よくらむ