住の江の岸に寄る波よるさへや
夢の通ひ路人目よくらむ
- 歌の意味
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住の江の岸に寄る波の、その「よる」ではないが、夜までも、夢の通い路でさえあなたは人目を避けるのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 559
詞書「寛平御時后の宮の歌合の歌」
昼はもちろん、人目のない夜の夢の通い路でさえも、恋しい人は人目を避けて逢いに来てくれないのかと嘆く歌である。住の江の岸に寄せる波を序詞とし、「寄る」から同音の「夜」を導く技巧が用いられている。夢にさえ現れない相手の態度を、人目を気にしているのかと推し量るところに、逢えない恋の切なさがにじむ。寛平御時后宮歌合での作で、のちに藤原定家の小倉百人一首に採られている。
作者の「藤原としゆきの朝臣」は藤原敏行である。平安時代前期の歌人で、藤原富士麻呂の子。蔵人頭、右兵衛督などを務め、書の名手としても知られる。三十六歌仙の一人である。
初句「住の江の」 「住の江」は摂津国の歌枕で、現在の大阪市住吉区の住吉大社周辺の海岸である。
二句「岸に寄る波」 初句と合わせて序詞となり、「寄る」の音によって三句の「よる」を導く。寄せては返す波の景が、通って来ない相手の姿と重なる。
三句「よるさへや」 「よる」は二句の「寄る」を受けて同音で「夜」を表し、両義が響き合う。「さへ」は添加で、昼はもちろん夜までもの意である。「や」は疑問の係助詞で、結句の「らむ」と係り結びをなす。
四句「夢の通ひ路」 夢の中で恋人のもとへ通う道である。前歌の第五百五十八首の「夢の直路」と対応し、同じ作者が夢の道を続けて詠んでいる。
結句「人目よくらむ」 「よく」は避ける意、「らむ」は現在推量で、「や」の結びとして連体形をとる。現実ならまだしも、夢の中でまで人目を避けるのかと嘆く心を表す。
すみのえ:摂津国の歌枕。現在の大阪市住吉区あたりの海岸
よる:岸に「寄る」波の音から「夜」を導き、両義を響かせる
かよひぢ:恋人のもとへ通う道
よく:避ける
- 作者
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藤原敏行
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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恋ひわびてうち寝る中に行き通ふ 夢の直路はうつつならなむ
- 次の歌
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わが恋はみ山隠れの草なれや しげさまされど知る人のなき