宵の間もはかなく見ゆる夏虫に
迷ひまされる恋もするかな
- 歌の意味
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宵のわずかな間さえも生きながらえず、はかなく見える夏虫よりも、なお心の迷いのまさる恋をしていることだ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 561
詞書「寛平御時后の宮の歌合の歌」
灯火に飛び込んで宵のうちに命を落とす夏虫のはかなさを引き合いに出し、それ以上に心の迷う恋をしていると詠む歌である。自ら火に身を投じる夏虫の姿に、分別を失って恋に身を焦がす自分を重ねている。寛平御時后宮歌合での作で、同歌合の歌が並ぶ一連の中に置かれている。次歌の蛍の歌とともに夏の虫を詠んだ二首が並ぶ。
作者の「紀とものり」は紀友則である。平安時代前期の歌人で、紀有友の子、紀貫之の従兄弟にあたる。大内記などを務め、古今和歌集の撰者の一人に任じられたが、完成を見ずに没した。三十六歌仙の一人である。
初句「宵の間も」 「宵の間」は日が暮れて間もない夜のはじめのひとときである。「も」はその短い間さえもの意で、夏虫の命の短さを示す。
二句「はかなく見ゆる」 はかなく命を落とすように見えるの意で、三句の「夏虫」を修飾する。
三句「夏虫に」 「夏虫」は灯火に集まって身を焼く蛾などの虫である。「に」は比較の基準を表し、夏虫よりもの意となる。本巻の第六百首も夏虫を引いて恋の思いの火を詠んでおり、同じ景物が巻中で呼応する。
四句「迷ひまされる」 灯火に迷い入る夏虫よりも、心の迷いがまさっていることを言う。「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。
結句「恋もするかな」 「かな」は詠嘆の終助詞である。本巻の第五百六十五首、第五百七十九首も同じ結句「恋もするかな」で結んでおり、比喩の景物を変えて同じ型の歌が繰り返される。
よひ:日が暮れて間もない夜のはじめのころ
なつむし:夏の夜、灯火に集まって身を焼く蛾などの虫
- 作者
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紀友則
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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わが恋はみ山隠れの草なれや しげさまされど知る人のなき
- 次の歌
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夕されば蛍よりけに燃ゆれども 光見ねばや人のつれなき