夕されば蛍よりけに燃ゆれども
光見ねばや人のつれなき
- 歌の意味
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夕方になると、蛍よりもいっそう激しく恋の思いに燃えているのに、その光が見えないからだろうか、あの人はつれない。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 562
詞書「寛平御時后の宮の歌合の歌」
夕暮れになると蛍の光よりも激しく恋の思いに燃えているのに、その炎は目に見えないために相手は冷淡なのだろうかと詠む歌である。「思ひ」に「火」を重ねる恋歌の常套を、夏の夜の蛍の光と比べることで具体的に描き出している。前歌の夏虫に続いて蛍を取り上げ、夏の虫を詠む二首が対をなす。寛平御時后宮歌合での作で、同歌合の歌が並ぶ一連の中に置かれている。
作者の「紀とものり」は紀友則である。平安時代前期の歌人で、紀有友の子、紀貫之の従兄弟にあたる。大内記などを務め、古今和歌集の撰者の一人に任じられたが、完成を見ずに没した。三十六歌仙の一人である。
初句「夕されば」 「夕さる」は夕方になる意で、「ば」は恒常的な条件を示し、夕方になるといつもの意である。恋人の訪れを待つ時刻でもある。
二句「蛍よりけに」 「けに」はいっそう、ひときわの意である。蛍の光を比較の基準として、自らの思いの激しさを言う。
三句「燃ゆれども」 恋の思いに身を焦がすことを火が燃えることにたとえ、逆接の「ども」で四句へ続ける。前歌の第五百六十一首で火に身を投じた夏虫と照応する。
四句「光見ねばや」 蛍と違って恋の火には光が見えないのでの意で、「や」は疑問の係助詞として結句と係り結びをなす。
結句「人のつれなき」 「や」の結びとして連体形「つれなき」で結ぶ。目に見えない思いの火を相手が知らないことへの嘆きが表れている。
ゆふさる:夕方になる
もゆ:燃える。ここでは恋の思いに身を焦がす意
- 作者
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紀友則
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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宵の間もはかなく見ゆる夏虫に 迷ひまされる恋もするかな
- 次の歌
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笹の葉に置く霜よりもひとり寝る わが衣手ぞ冴えまさりける