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わが宿の菊の垣根に置く霜の
消えかへりてぞ恋しかりける

歌の意味
わが家の菊の垣根に置いた霜が消えるように、身も消え入るほどに恋しく思われることだ。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 564

詞書「寛平御時后の宮の歌合の歌」
 わが家の菊の垣根に置いた霜がはかなく消えてゆくように、自分も消え入りそうなほど恋しいと詠む歌である。上の句の景を序詞として下の句の心情を導き、晩秋の霜の白さと菊の取り合わせが、恋に沈む心を静かに映している。寛平御時后宮歌合での作で、同歌合の歌が並ぶ一連の中に置かれている。前歌に続いて霜を詠む。
 作者の「紀とものり」は紀友則である。平安時代前期の歌人で、紀有友の子、紀貫之の従兄弟にあたる。大内記などを務め、古今和歌集の撰者の一人に任じられたが、完成を見ずに没した。三十六歌仙の一人である。

 初句「わが宿の」 「宿」は住まい、家のことである。
 二句「菊の垣根に」 菊を植えた垣根のことで、霜の置く晩秋の景である。
 三句「置く霜の」 初句からここまでが序詞で、霜が消えることから四句の「消えかへり」を導く。前歌の第五百六十三首の「置く霜」と同じ景物を受け、前歌が霜の冷たさを詠んだのに対し、ここでは霜の消えやすさを詠む。
 四句「消えかへりてぞ」 「消えかへる」はすっかり消える意と、死ぬほどに思い悩む意とを重ねて言う。係助詞「ぞ」は結句の「ける」と係り結びをなす。
 結句「恋しかりける」 「ける」は「ぞ」の結びの連体形で、身も消え入るほどの恋しさにあらためて気づく詠嘆を表す。

やど:住まい、家
きえかへる:すっかり消える。また、消え入るほどに思い悩む
作者
紀友則
出典
古今和歌集
前の歌
笹の葉に置く霜よりもひとり寝る わが衣手ぞ冴えまさりける
次の歌
川の瀬になびく玉藻の水隠れて 人に知られぬ恋もするかな