君恋ふる涙の床に満ちぬれば
みをつくしとぞ我はなりぬる
- 歌の意味
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あなたを恋しく思う涙が寝床に満ちてしまったので、私は水路の目印の澪標となり、身も尽き果ててしまった。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 567
詞書「寛平御時后の宮の歌合の歌」
恋しさに流す涙が寝床にあふれて海のようになったので、自分はその中に立つ澪標となってしまい、身も尽き果てたと詠む歌である。涙を海にたとえる誇張に、「澪標」と「身を尽くし」を掛ける技巧を重ね、恋に身を尽くす苦しみを機知的に表している。寛平御時后宮歌合での作で、同歌合の歌が並ぶ一連の中に置かれている。
作者の「藤原おきかせ」は藤原興風である。平安時代前期の歌人で、藤原浜成の曽孫、藤原道成の子。相模掾、下総権大掾などを務めた。琴の名手としても知られ、三十六歌仙の一人である。
初句「君恋ふる」 あなたを恋しく思うの意で、二句の「涙」を修飾する。本巻の第五百七十二首も同じ初句「君恋ふる」で始まり、同じ歌合の歌で涙を詠む二首が呼応する。
二句「涙の床に」 涙が寝床に流れることを言う。独り寝の床である。
三句「満ちぬれば」 「ぬれ」は完了の助動詞「ぬ」の已然形で、確定条件の「ば」が付き、満ちてしまったのでの意となる。涙を海の潮にたとえる誇張である。
四句「みをつくしとぞ」 「みをつくし」は水路を示すために立てる杭の「澪標」と「身を尽くし」を掛けた掛詞である。涙の海に立つ澪標となった自分の姿と、恋に身を尽くす意とが重なる。係助詞「ぞ」は結句と係り結びをなす。
結句「我はなりぬる」 「ぬる」は「ぞ」の結びの連体形で、ついにそうなってしまったと結ぶ。
みをつくし:水路の目印に立てる杭の「澪標」と、「身を尽くし」を掛ける
- 作者
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藤原興風
- 出典
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古今和歌集
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かきくらし降る白雪の下消えに 消えて物思ふころにもあるかな
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死ぬる命生きもやすると試みに 玉の緒ばかり逢はむと言はなむ