恋しきにわびて魂迷ひなば
むなしき殻の名にや残らむ
- 歌の意味
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恋しさに苦しんで魂が身から抜け出してさまよってしまったら、私は中身のない抜け殻として、その名だけが残るのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 571
詞書「寛平御時后の宮の歌合の歌」
恋しさに苦しむあまり魂が身から抜け出してさまよい出てしまったら、残された自分は魂のない抜け殻として名をとどめるのだろうかと詠む歌である。恋の思いが極まると魂が身体を離れるという当時の考え方を踏まえ、恋に死ぬほどの苦しみを表している。寛平御時后宮歌合での作で、同歌合の歌が並ぶ一連の中に置かれている。
作者は「よみ人しらず」で、名は伝わらない。
初句「恋しきに」 「恋しき」は恋しいこと、「に」は原因を表し、恋しさのためにの意である。
二句「わびて魂」 「わぶ」は思い悩む意である。「魂」は身体に宿る霊魂のことで、思いが極まると身から離れてさまようと考えられていた。
三句「迷ひなば」 「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形で、仮定条件の「ば」が付き、さまよってしまったならの意となる。前歌の第五百七十首が心をどこかへやりたいと願ったのに対し、ここでは魂が自ら抜け出てしまう場合を思い描き、二首が呼応している。
四句「むなしき殻の」 「むなしき殻」は魂の抜けた身体、抜け殻のことである。
結句「名にや残らむ」 「や」は疑問の係助詞で、「残らむ」の「む」は推量の助動詞の連体形として「や」の結びとなる。抜け殻という名だけが残るのかと、わが身の行く末を思いやって結ぶ。
わぶ:思い悩む、つらく思う
たましひ:身体に宿る霊魂
から:魂の抜けた身体、抜け殻
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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わりなくも寝ても覚めても恋しきか 心をいづちやらば忘れむ
- 次の歌
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君恋ふる涙しなくは唐衣 胸のあたりは色燃えなまし