世とともに流れてぞ行く涙川
冬も凍らぬ水泡なりけり
- 歌の意味
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いつまでも絶えることなく流れてゆく涙の川は、冬になっても凍ることのない水の泡であったよ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 573
詞書「題しらず」
尽きることなく流れ続ける涙を川にたとえ、その涙川は冬になっても凍らない水の泡であったと詠む歌である。冬の川は凍るものなのに、涙の川は凍ることがないとして、恋の悲しみが季節を問わず絶え間なく続くことを表している。涙の量を川にたとえる誇張は恋歌の常套であるが、冬の凍結と対比したところに工夫がある。本巻ではここから題しらずの歌が続く。
作者の「紀つらゆき」は紀貫之である。平安時代前期の歌人で、紀望行の子。古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を記した。土佐守を務め、帰京の旅を描いた土佐日記の作者としても知られる。三十六歌仙の一人である。
初句「世とともに」 いつまでも、絶えずの意である。
二句「流れてぞ行く」 係助詞「ぞ」を受けて連体形「行く」で結ぶ係り結びで、絶えず流れ続けることを強調する。
三句「涙川」 「涙川」は流れる涙の多さを川にたとえた語である。前歌の第五百七十二首が涙で思いの火を消すと詠んだのに続き、涙の量の誇張が続いている。
四句「冬も凍らぬ」 冬の川は凍るものであるのに、涙の川は凍ることがないと対比する。本巻の第五百九十一首では逆に表面の凍った冬川の下を流れる水に恋心をたとえており、冬の川をめぐって二首が対照をなす。
結句「水泡なりけり」 「水泡」は水の泡のことである。「けり」は気づきの詠嘆で、凍らぬ水の泡であったと結ぶ。
なみだがは:流れる涙の多さを川にたとえた語
みなわ:水の泡
- 作者
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紀貫之
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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君恋ふる涙しなくは唐衣 胸のあたりは色燃えなまし
- 次の歌
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夢路にも露や置くらむ夜もすがら 通へる袖のひちて乾かぬ