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夢路にも露や置くらむ夜もすがら
通へる袖のひちて乾かぬ

歌の意味
夢の中の道にも露が降りているのだろうか。一晩中そこを通っていた私の袖が、濡れて乾かないことだ。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 574

詞書「題しらず」
 夢の中で一晩中恋しい人のもとへ通っていたが、目覚めると袖が濡れて乾かないので、夢の道にも露が置いているのだろうかと詠む歌である。実際には涙で濡れた袖を、夢路の露に濡れたものと見立てる機知によって、夢でしか逢えない恋のはかなさと悲しみを表している。
 作者の「紀つらゆき」は紀貫之である。平安時代前期の歌人で、紀望行の子。古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を記した。土佐守を務め、帰京の旅を描いた土佐日記の作者としても知られる。三十六歌仙の一人である。

 初句「夢路にも」 「夢路」は夢の中で通う道である。「も」は現実の道と同じように夢の道にもの意である。本巻の第五百五十八首の「夢の直路」、第五百五十九首の「夢の通ひ路」と同じく、夢の中の道を詠む。
 二句「露や置くらむ」 「や」は疑問の係助詞で、「らむ」は現在推量の助動詞、その結びとして連体形をとる。ここで句切れとなる。露は袖を濡らす涙の見立てである。
 三句「夜もすがら」 一晩中の意である。
 四句「通へる袖の」 「る」は存続の助動詞「り」の連体形で、夢路を通い続けた袖の意である。
 結句「ひちて乾かぬ」 「ひつ」は濡れる意である。「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形で、二句の推量の根拠を示す形で結ぶ。

ゆめぢ:夢の中で通う道
よもすがら:一晩中
ひつ:濡れる、ぬれ浸る
作者
紀貫之
出典
古今和歌集
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世とともに流れてぞ行く涙川 冬も凍らぬ水泡なりけり
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はかなくて夢にも人を見つる夜は 朝の床ぞ起き憂かりける