はかなくて夢にも人を見つる夜は
朝の床ぞ起き憂かりける
- 歌の意味
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はかなくも夢の中でだけあの人に逢えた夜は、朝の寝床から起き上がるのがつらいことだ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 575
詞書「題しらず」
現実には逢えず、はかなく夢の中でだけ恋しい人に逢えた夜は、翌朝寝床から起き出すのがつらいと詠む歌である。夢の余韻を少しでも長く味わっていたいという心と、目覚めて現実に戻るつらさとが、朝の床を離れがたい気持ちとして表されている。本巻冒頭の小町の歌と同じく、夢から覚めることを惜しむ心を詠む。
作者の「そせい法し」は素性法師である。僧正遍昭の子で、俗名を良岑玄利という。出家して雲林院に住み、のち大和の石上の良因院に移った。三十六歌仙の一人である。
初句「はかなくて」 頼りなく、むなしいさまを言い、夢でしか逢えないことのはかなさを表す。
二句「夢にも人を」 「も」は、せめて夢にでもの意を含む。「人」は恋しい相手である。
三句「見つる夜は」 「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形で、夢に見た夜はの意となる。
四句「朝の床ぞ」 「朝」は夜が明けたころ、翌朝のことである。係助詞「ぞ」は結句の「ける」と係り結びをなす。
結句「起き憂かりける」 「起き憂し」は起きるのがつらい意である。「ける」は「ぞ」の結びの連体形で、気づきの詠嘆を表す。本巻の第五百五十二首が夢と知っていれば覚めなかったと詠んだのと同じく、夢から覚めることへの未練を詠み、巻頭の夢の歌と呼応する。
あした:朝、翌朝
おきうし:起きるのがつらい
- 作者
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素性法師
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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夢路にも露や置くらむ夜もすがら 通へる袖のひちて乾かぬ
- 次の歌
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いつはりの涙なりせば唐衣 しのびに袖はしぼらざらまし