いつはりの涙なりせば唐衣
しのびに袖はしぼらざらまし
- 歌の意味
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もしこれが偽りの涙であったなら、人目を忍んでひそかに袖を絞ったりはしないだろう。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 576
詞書「題しらず」
もし自分の涙が偽りのものであったなら、人目を忍んでひそかに袖を絞るようなことはしないだろうと詠む歌である。人に見せるための涙ではなく、誰にも知られないところで絞るほどの涙だからこそ真実なのだと、恋心の誠を訴えている。反実仮想を用いて、自分の涙の真実を裏側から証し立てるところに工夫がある。
作者の「藤原たたふさ」は藤原忠房である。平安時代前期の官人で、京家藤原氏の出身。右京大夫などを務めた。管弦に優れ、雅楽の曲の作者としても伝えられる。
初句「いつはりの」 偽りの、うそのの意で、二句の「涙」を修飾する。
二句「涙なりせば」 「せ」は過去の助動詞「き」の未然形とされ、結句の「まし」と呼応して反実仮想の構文をつくる。もし偽りの涙であったならの意である。
三句「唐衣」 衣の美称で、四句の「袖」を導く。本巻の第五百七十二首も三句に「唐衣」を置き、衣と涙を詠む点で呼応する。
四句「しのびに袖は」 「しのびに」は人目を避けてひそかにの意である。
結句「しぼらざらまし」 「しぼる」は涙に濡れた袖を絞る意、「まし」は反実仮想の助動詞で、絞りはしないだろうと結ぶ。人知れず袖を絞る現実を裏返しに示して、涙の真実を訴える。
からころも:衣の美称
しのびに:人目を避けてひそかに
- 作者
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藤原忠房
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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はかなくて夢にも人を見つる夜は 朝の床ぞ起き憂かりける
- 次の歌
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音に泣きてひちにしかども春雨に 濡れにし袖と問はば答へむ