わがごとくものや悲しきほととぎす
時ぞともなく夜ただ鳴くらむ
- 歌の意味
-
私と同じように何か悲しいことがあるのか、ほととぎすよ。時を選ばず、夜通しひたすら鳴いているのは。
- 鑑賞
-
巻第十二 恋歌二 578
詞書「題しらず」
時を選ばず夜通し鳴き続けるほととぎすに向かって、お前も私のように物悲しいのかと問いかける歌である。夜ごとに恋に泣き明かす自分の姿を、鳴き続けるほととぎすに重ねており、「鳴く」と「泣く」とが響き合う。次歌とともにほととぎすを詠む二首が並ぶ。
作者の「としゆきの朝臣」は藤原敏行である。平安時代前期の歌人で、藤原富士麻呂の子。蔵人頭、右兵衛督などを務め、書の名手としても知られる。三十六歌仙の一人である。
初句「わがごとく」 私のようにの意で、ほととぎすを自分と同じ境遇のものと見る。
二句「ものや悲しき」 「や」は疑問の係助詞で、連体形「悲しき」で結ぶ。何となく悲しいのかと問いかけ、ここで句切れとなる。
三句「ほととぎす」 夏を代表する鳥で、夜も鋭い声で鳴くとされた。呼びかけの語として置かれている。次歌の第五百七十九首も三句に「ほととぎす」を置き、二首が同じ位置で同じ鳥を詠む。
四句「時ぞともなく」 「時ぞともなし」はいつと時を定めない、絶えずの意である。
結句「夜ただ鳴くらむ」 「ただ」はひたすら、「らむ」は原因推量で、なぜ夜通しひたすら鳴いているのだろうかの意となる。鳴き続ける鳥の声に、泣き明かす自分の声を重ねて結ぶ。
ときぞともなし:いつと時を定めない、絶えず
- 作者
-
藤原敏行
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
音に泣きてひちにしかども春雨に 濡れにし袖と問はば答へむ
- 次の歌
-
五月山梢を高みほととぎす 鳴く音そらなる恋もするかな