秋なれば山とよむまで鳴く鹿に
我劣らめやひとり寝る夜は
- 歌の意味
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秋なので、山に響きわたるほど鳴く鹿に、私が劣るだろうか、いや劣りはしない。ひとりで寝る夜は。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 582
詞書「是貞の親王の家の歌合の歌」
秋になり、妻を求めて山に響くほど鳴く鹿にも、独り寝の夜に泣く自分は劣らないと詠む歌である。妻恋いの鹿の声を引き合いに出し、恋しさに泣く声の大きさ、思いの深さを反語によって強く訴えている。是貞親王家歌合での作である。本巻ではこのあたりから秋の景物を詠み込む歌が続いている。
作者は「よみ人しらず」で、名は伝わらない。
初句「秋なれば」 已然形に「ば」が付いた確定条件で、秋なのでの意である。秋は鹿が妻を求めて鳴く季節とされた。
二句「山とよむまで」 「とよむ」は音が鳴り響く意で、山に響きわたるほどにの意となる。
三句「鳴く鹿に」 牡鹿が牝鹿を恋うて鳴く声は、恋の悲しみを表す景物として詠まれる。前歌の第五百八十一首が声を立てない自分を虫と対比したのに対し、ここでは声高く泣く自分を鹿と比べ、二首が対照をなす。
四句「我劣らめや」 「め」は推量の助動詞「む」の已然形、「や」は反語で、私が劣るだろうか、いや劣らないの意となる。ここで句切れとなり、結句と倒置の関係にある。
結句「ひとり寝る夜は」 倒置によって、泣く時を後から示す。独り寝の夜の寂しさを強調して結ぶ。
とよむ:音が鳴り響く
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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虫のごと声に立てては泣かねども 涙のみこそ下に流るれ
- 次の歌
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秋の野に乱れて咲ける花の色の 千草に物を思ふころかな