秋の野に乱れて咲ける花の色の
千草に物を思ふころかな
- 歌の意味
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秋の野に乱れて咲いている花の色がさまざまであるように、あれこれと思い悩むこのごろであることよ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 583
詞書「題しらず」
秋の野に咲き乱れる花の色がさまざまであるように、自分もあれこれと千々に思い悩んでいると詠む歌である。上の句の華やかな秋の野の景を序詞とし、色とりどりの花に乱れる恋心を重ねている。景の美しさと心の乱れとが対照的に響き合う一首である。本巻ではこのあたりから秋の景物を詠み込む歌が続いている。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。平安時代前期の歌人で、紀望行の子。古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を記した。土佐守を務め、土佐日記の作者としても知られる。三十六歌仙の一人である。
初句「秋の野に」 秋の草花が咲く野である。
二句「乱れて咲ける」 「ける」は存続の助動詞「り」の連体形で、咲き乱れているの意である。「乱れ」は恋に乱れる心をも思わせる。
三句「花の色の」 初句からここまでが序詞で、花の色の多様さから四句の「千草に」を導く。六音の字余りの句である。
四句「千草に物を」 「千草」はさまざまな草、種々の意で、ここではあれこれと、さまざまにの意となる。
結句「思ふころかな」 「物を思ふ」は恋に思い悩むことで、「かな」は詠嘆である。本巻の第五百六十六首の「物思ふころにもあるかな」と同じく、思い悩む日々を詠嘆して結ぶ。
ちくさ:さまざまな草。転じて、さまざま、種々
- 作者
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紀貫之
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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秋なれば山とよむまで鳴く鹿に 我劣らめやひとり寝る夜は
- 次の歌
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ひとりして物を思へば秋の夜の 稲葉のそよといふ人のなき