ひとりして物を思へば秋の夜の
稲葉のそよといふ人のなき
- 歌の意味
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ひとりで思い悩んでいると、秋の夜の稲葉がそよと音を立てるように、「そうよ」と言ってくれる人もいない。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 584
詞書「題しらず」
秋の夜にひとりで恋に思い悩んでいても、稲葉がそよそよと鳴るように「そうよ」と応えてくれる人はいないと詠む歌である。「そよ」に稲葉の葉ずれの音と、相手の言葉に同意する「そうよ」の意とを掛け、語り合う相手のいない孤独を、秋の夜の静けさの中に描き出している。本巻ではこのあたりに秋の景物を詠み込む歌がまとまって置かれている。
作者の「みつね」は凡河内躬恒である。平安時代前期の歌人で、古今和歌集の撰者の一人。甲斐少目、和泉大掾などの地方官を務めたが、歌才は高く評価された。三十六歌仙の一人である。
初句「ひとりして」 ひとりで、自分ひとりだけでの意である。
二句「物を思へば」 「物を思ふ」は恋に思い悩むこと、「ば」は確定条件で、思い悩んでいるとの意である。
三句「秋の夜の」 三句から四句の「稲葉の」までが序詞となり、稲葉の音から「そよ」を導く。
四句「稲葉のそよと」 「そよ」は稲の葉が風にそよぐ音と、「そうよ」と同意する言葉とを掛けた掛詞である。
結句「いふ人のなき」 「そうよ」と言ってくれる人もいないの意で、連体形「なき」で余情を残して結ぶ。本巻の第五百六十首も同じく「人のなき」で結び、理解してくれる人のいない孤独を詠む点で呼応する。
いなば:稲の葉
そよ:稲葉のそよぐ音と、「そうよ」と同意する言葉を掛ける
- 作者
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凡河内躬恒
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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秋の野に乱れて咲ける花の色の 千草に物を思ふころかな
- 次の歌
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人を思ふ心は雁にあらねども 雲居にのみもなきわたるかな