越えぬ間は吉野の山の桜花
人づてにのみ聞きわたるかな
- 歌の意味
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山を越えて行かないうちは、吉野の山の桜の花のことを人づてにばかり聞くように、あなたのことを人づてにばかり聞き続けていることだ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 588
詞書「大和に侍りける人につかはしける」
大和国にいる人に贈った歌である。山を越えて訪ねて行かないうちは、吉野山の桜の評判を人づてに聞くばかりであるように、あなたのことも人づてに聞き続けるばかりだと詠む。名高い吉野の桜に相手をたとえ、まだ逢ったことのない人への憧れを表している。詞書から、大和に住む人への恋の贈歌であることがわかる。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。平安時代前期の歌人で、紀望行の子。古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を記した。土佐守を務め、土佐日記の作者としても知られる。三十六歌仙の一人である。
初句「越えぬ間は」 「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形で、山を越えて行かないうちはの意である。都から大和へは山を越えて行く。
二句「吉野の山の」 「吉野の山」は大和国の歌枕で、桜の名所として名高い。
三句「桜花」 大和にいる相手を吉野の桜にたとえる。本巻の第五百八十九首、第五百九十首にも桜の花が詠まれ、花を詠む恋歌が三首続く。
四句「人づてにのみ」 「人づて」は人を介して伝え聞くことである。「のみ」で、直接逢うことはなく人づてばかりであることを強調する。
結句「聞きわたるかな」 「わたる」はずっと〜し続ける意で、「かな」は詠嘆である。本巻の第五百八十五首の「なきわたるかな」と同じく「わたるかな」で結ぶ。
ひとづて:人を介して伝え聞くこと
わたる:(動詞の連用形に付いて)ずっと〜し続ける
- 作者
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紀貫之
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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真菰刈る淀の沢水雨降れば 常よりことにまさるわが恋
- 次の歌
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露ならぬ心を花に置きそめて 風吹くごとに物思ひぞつく