露ならぬ心を花に置きそめて
風吹くごとに物思ひぞつく
- 歌の意味
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露ではない私の心を花に置き始めてからというもの、風が吹くたびに物思いがつのることだ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 589
詞書「弥生ばかりに物のたうびける人のもとに、また人まかりつつ消息すと聞きてつかはしける」
三月ごろ、言葉を交わしていた女のもとに、ほかの男も通って便りをしていると聞いて贈った歌である。露ではない自分の心を花に置き始めてから、風が吹くたびに花が散りはしないかと物思いがつのると詠む。花を相手の女に、風を言い寄るほかの男にたとえ、相手の心が移ることへの不安を表している。露、置く、花、風と縁のある語を連ねた構成に工夫がある。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。平安時代前期の歌人で、紀望行の子。古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を記した。土佐守を務め、土佐日記の作者としても知られる。三十六歌仙の一人である。
初句「露ならぬ」 露ではないの意である。露は花に置くものであることから、自分の心を露になぞらえつつ、はかない露とは違うと言う。
二句「心を花に」 「花」は恋しい相手の女をたとえる。前歌の第五百八十八首の桜花に続き、ここでも相手を花にたとえている。
三句「置きそめて」 「置く」は露の縁語で、心を寄せることを露が置くことに重ねる。「そむ」は〜し始める意である。
四句「風吹くごとに」 「風」は花を散らすもので、相手に言い寄るほかの男をたとえる。
結句「物思ひぞつく」 「物思ひ」は恋の思い悩み、「つく」は生じる、加わる意である。係助詞「ぞ」を受けて連体形「つく」で結ぶ。
のたうぶ:「言ふ」の尊敬語。ここでは言葉を交わす意
まかる:行く、出向く
せうそこ:便り、手紙
おく:露が降りる。ここでは心を寄せる意を重ねる
- 作者
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紀貫之
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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越えぬ間は吉野の山の桜花 人づてにのみ聞きわたるかな
- 次の歌
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わが恋にくらぶの山の桜花 間なく散るとも数はまさらじ