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わが恋にくらぶの山の桜花
間なく散るとも数はまさらじ

歌の意味
私の恋と比べたならば、くらぶの山の桜の花が絶え間なく散っても、その数は私の恋の思いの数にまさることはあるまい。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 590

詞書「題しらず」
 くらぶの山の桜の花が絶え間なく散るとしても、その花びらの数は自分の恋の思いの数にはかなわないだろうと詠む歌である。山の名の「くらぶ」に「比ぶ」を掛け、散る花の数と恋の思いの多さを比べる誇張によって、思いの深さを表している。前二首に続き、桜の花を詠む歌である。
 作者の「坂上これのり」は坂上是則である。平安時代前期の歌人で、坂上田村麻呂の子孫、坂上好蔭の子。大和権少掾、加賀介などを務めた。蹴鞠の名手としても知られ、三十六歌仙の一人である。

 初句「わが恋に」 私の恋にの意で、二句の「くらぶ」と結びつき、私の恋と比べるとの意を表す。
 二句「くらぶの山の」 「くらぶ」は山の名の「暗部山」と、比べる意の「比ぶ」とを掛けた掛詞である。暗部山は鞍馬山の古名とされる。
 三句「桜花」 本巻の第五百八十八首、第五百八十九首に続いて桜の花を詠み、花の恋歌が三首並ぶ。
 四句「間なく散るとも」 「間なく」は絶え間なく、「とも」は逆接の仮定条件で、絶え間なく散ったとしてもの意である。
 結句「数はまさらじ」 「じ」は打消推量の助動詞で、散る花の数も恋の思いの数にはまさらないだろうと結ぶ。

くらぶ:山の名の「暗部山」と、比べる意の「比ぶ」を掛ける
くらぶのやま:鞍馬山の古名とされる山
作者
坂上是則
出典
古今和歌集
前の歌
露ならぬ心を花に置きそめて 風吹くごとに物思ひぞつく
次の歌
冬川の上は凍れる我なれや 下に流れて恋ひわたるらむ