たぎつ瀬に根ざしとどめぬ浮草の
うきたる恋も我はするかな
- 歌の意味
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激しく流れる早瀬に根を下ろしてとどまることのできない浮草のように、落ち着くところのない、つらい恋を私はしていることだ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 592
詞書「題しらず」
激しい早瀬に根を下ろせず漂う浮草のように、頼りなく落ち着かない恋をしていると詠む歌である。上の句を序詞とし、「浮き」と「憂き」を掛けて、定まらない恋の不安とつらさを表している。前歌の冬川の下を流れる水に続き、水辺の景物を用いた歌が並ぶ。
作者の「たたみね」は壬生忠岑である。平安時代前期の歌人で、壬生忠見の父。下級官人であったが、古今和歌集の撰者の一人に選ばれた。三十六歌仙の一人である。
初句「たぎつ瀬に」 「たぎつ瀬」は水が激しく逆巻いて流れる早瀬である。本巻の第五百五十七首で小町が自らの涙を「たぎつ瀬」にたとえた語と同じ語を用いる。
二句「根ざしとどめぬ」 「根ざす」は根を下ろす意、「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形で、根を下ろしてとどまることができないの意である。
三句「浮草の」 水面に浮いて漂う草である。初句からここまでが序詞となり、同音の「うき」を導く。
四句「うきたる恋も」 「うき」は浮草の「浮き」と、つらい意の「憂き」とを掛けた掛詞である。頼りなく定まらない恋であり、つらい恋でもあることを表す。
結句「我はするかな」 「かな」は詠嘆である。本巻の第五百六十一首などの「恋もするかな」と同じ型を、「恋も我はするかな」と語順を変えて用いている。
たぎつせ:水が激しく流れる早瀬
ねざす:根を下ろす
うき:浮草の「浮き」と、つらい意の「憂き」を掛ける
- 作者
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壬生忠岑
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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冬川の上は凍れる我なれや 下に流れて恋ひわたるらむ
- 次の歌
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宵々に脱ぎて我が寝る狩衣 かけて思はぬ時の間もなし