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東路の小夜の中山なかなかに
何しか人を思ひそめけむ

歌の意味
東国へ行く道にある小夜の中山の「なか」ではないが、なまじっか、どうしてあの人を思い始めてしまったのだろう。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 594

詞書「題しらず」
 東国への道にある小夜の中山の名を序詞として、同音の「なかなかに」を導き、なまじっかどうしてあの人を思い始めてしまったのかと悔やむ歌である。報われない恋を始めてしまったことへの後悔が、険しい峠の名を借りて表されている。
 作者の「とものり」は紀友則である。平安時代前期の歌人で、紀有友の子、紀貫之の従兄弟にあたる。大内記などを務め、古今和歌集の撰者の一人に任じられたが、完成を見ずに没した。三十六歌仙の一人である。

 初句「東路の」 「東路」は都から東国へ向かう道、東海道などを言う。
 二句「小夜の中山」 遠江国の歌枕で、東海道の難所として知られる峠である。初句と合わせて序詞となり、「中山」の「なか」の音から三句の「なかなかに」を導く。
 三句「なかなかに」 なまじっか、かえっての意である。いっそ思わなければよかったのに、という気持ちを表す。
 四句「何しか人を」 「何しか」はどうして、なぜの意で、「し」は強意の副助詞である。
 結句「思ひそめけむ」 「そむ」は〜し始める意、「けむ」は過去の原因推量で、どうして思い始めてしまったのだろうと過去を悔やんで結ぶ。本巻の第五百五十三首の「頼みそめてき」と同じく「そむ」を用いて恋の始まりを詠むが、あちらが夢を頼み始めた心を詠むのに対し、こちらは思い始めたことへの後悔を詠む。

あづまぢ:都から東国へ向かう道
さやのなかやま:遠江国の歌枕。東海道の難所の峠
そむ:(動詞の連用形に付いて)〜し始める
作者
紀友則
出典
古今和歌集
前の歌
宵々に脱ぎて我が寝る狩衣 かけて思はぬ時の間もなし
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敷妙の枕の下に海はあれど 人をみるめは生ひずぞありける