年を経て消えぬおもひはありながら
夜の袂はなほ凍りけり
- 歌の意味
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何年たっても消えることのない思いの火はあるというのに、夜の袂は涙でやはり凍りついていることだ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 596
詞書「題しらず」
長い年月を経ても消えない恋の思いの火を胸に抱いているのに、独り寝の夜の袂は涙で凍りついていると詠む歌である。「思ひ」の「ひ」に「火」を掛け、燃える火と凍る袂という熱と冷たさの矛盾を対比させて、報われない恋の苦しさを表している。本巻における友則の四首の最後の歌である。
作者の「とものり」は紀友則である。平安時代前期の歌人で、紀有友の子、紀貫之の従兄弟にあたる。大内記などを務め、古今和歌集の撰者の一人に任じられたが、完成を見ずに没した。三十六歌仙の一人である。
初句「年を経て」 長い年月を経ての意で、恋が長く続いていることを示す。
二句「消えぬおもひは」 「おもひ」は「思ひ」の「ひ」に「火」を掛けた掛詞で、消えない恋の火を言う。「消え」は火の縁語である。
三句「ありながら」 「ながら」は逆接で、あるのにの意である。
四句「夜の袂は」 独り寝の夜の袂で、涙に濡れていることを暗示する。
結句「なほ凍りけり」 「なほ」はそれでもやはり、「けり」は気づきの詠嘆である。火があるのに袂が凍るという矛盾に気づいて嘆く。本巻の第五百六十三首で同じ作者が独り寝の袖の冷たさを霜と比べた趣向と通い合う。
おもひ:「思ひ」の「ひ」に「火」を掛ける
たもと:袖、特に袖の下の袋状の部分
- 作者
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紀友則
- 出典
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古今和歌集
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敷妙の枕の下に海はあれど 人をみるめは生ひずぞありける
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わが恋は知らぬ山路にあらなくに 迷ふ心ぞわびしかりける