わが恋は知らぬ山路にあらなくに
迷ふ心ぞわびしかりける
- 歌の意味
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私の恋は知らない山道というわけでもないのに、迷ってばかりいる心がつらいことだ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 597
詞書「題しらず」
自分の恋は見知らぬ山道ではないのに、心は迷ってばかりいてつらいと詠む歌である。道に迷うのは知らない山道であるはずなのに、よく知っているはずの自分の恋の中で迷うという逆説によって、どうしてよいかわからない恋の苦しさを表している。本巻ではここから貫之の歌が三首続く。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。平安時代前期の歌人で、紀望行の子。古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を記した。土佐守を務め、土佐日記の作者としても知られる。三十六歌仙の一人である。
初句「わが恋は」 本巻の第五百六十首と同じ初句で、自分の恋を主題として示す。
二句「知らぬ山路に」 見知らぬ山道のことで、道に迷いやすいところとして挙げる。
三句「あらなくに」 「なくに」は打消に詠嘆がこもった形で、〜ではないのにの意となる。ここで句切れとなる。
四句「迷ふ心ぞ」 恋にどうしてよいかわからず迷う心を言う。係助詞「ぞ」は結句の「ける」と係り結びをなす。本巻の第五百六十一首の「迷ひまされる」と同じく、恋の迷いを詠む。
結句「わびしかりける」 「わびし」はつらい、やるせない意で、「ける」は「ぞ」の結びの連体形である。
やまぢ:山道
わびし:つらい、やるせない
- 作者
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紀貫之
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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年を経て消えぬおもひはありながら 夜の袂はなほ凍りけり
- 次の歌
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紅のふりいでつつ泣く涙には 袂のみこそ色まさりけれ