紅のふりいでつつ泣く涙には
袂のみこそ色まさりけれ
- 歌の意味
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紅花を振り出して染めるように、声を振り絞って泣く涙によって、袂ばかりがますます紅の色が濃くなってゆくことだ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 598
詞書「題しらず」
紅花を水に振り出して染めるように、声を振り絞って泣く涙で、袂ばかりが紅の色を濃くしてゆくと詠む歌である。悲しみの極みに流す涙は血の涙となって紅色になるという考え方を踏まえ、「ふりいで」に染色の語と泣き声を振り絞る意を重ねている。泣けば泣くほど袂の色が深まるのに、相手の心は少しも動かないという嘆きがこめられている。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。平安時代前期の歌人で、紀望行の子。古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を記した。土佐守を務め、土佐日記の作者としても知られる。三十六歌仙の一人である。
初句「紅の」 「紅」は紅花から採る鮮やかな赤色の染料である。二句の「ふりいで」を導く。
二句「ふりいでつつ泣く」 「ふりいづ」は、紅花の染料を水に振り出して染める意と、声を振り絞って泣く意とを掛けた掛詞である。「つつ」は反復で、繰り返し泣くさまを表す。八音の字余りの句である。
三句「涙には」 声を振り絞って泣く涙によっての意である。
四句「袂のみこそ」 係助詞「こそ」は結句の「けれ」と係り結びをなす。「のみ」で、袂ばかりがと強調し、相手の心は変わらないことを暗示する。
結句「色まさりけれ」 「まさる」は色が濃くなる意、「けれ」は「こそ」の結びの已然形である。次歌の第五百九十九首も涙が紅に変わることを詠み、涙の色を詠む二首が並ぶ。
くれなゐ:紅花から採る赤色の染料。また、その色
ふりいづ:紅花の染料を振り出して染める意と、声を振り絞って泣く意を掛ける
たもと:袖、特に袖の下の袋状の部分
- 作者
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紀貫之
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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わが恋は知らぬ山路にあらなくに 迷ふ心ぞわびしかりける
- 次の歌
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白玉と見えし涙も年ふれば 唐紅にうつろひにけり