- 歌の意味
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はじめは白玉のように見えた涙も、年月がたつと、濃い紅の色に変わってしまった。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 599
詞書「題しらず」
恋のはじめには白玉のように見えた涙も、報われない恋が年を重ねるうちに、深い紅色の血の涙に変わってしまったと詠む歌である。涙の色の変化によって、恋の悲しみが年月とともに深まってきたことを表している。前歌の紅に染まる袂に続き、涙が紅に移り変わる様を詠み、本巻における貫之の三首を結ぶ。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。平安時代前期の歌人で、紀望行の子。古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を記した。土佐守を務め、土佐日記の作者としても知られる。三十六歌仙の一人である。
初句「白玉と」 「白玉」は真珠のことで、涙の粒の見立てとして用いられる。本巻の第五百五十六首で清行が涙を「白玉」にたとえたのと同じ見立てである。
二句「見えし涙も」 「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、かつては白玉と見えた涙もの意である。
三句「年ふれば」 「ふる」は年月が経つ意で、「ば」は確定条件である。前歌の第五百九十八首が泣くたびに色を深める袂を詠んだのに対し、ここでは年月の経過による変化を詠み、一時と年月という異なる尺度で涙の色を描いている。
四句「唐紅に」 「唐紅」は舶来の紅の意で、濃く鮮やかな紅色である。悲しみの極みに流す血の涙を表す。
結句「うつろひにけり」 「うつろふ」は色が変わる意で、「にけり」は完了と詠嘆で、すっかり変わってしまったと気づいて結ぶ。
しらたま:白い玉、真珠
からくれなゐ:濃く鮮やかな紅色
うつろふ:色が変わる
- 作者
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紀貫之
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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紅のふりいでつつ泣く涙には 袂のみこそ色まさりけれ
- 次の歌
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夏虫を何か言ひけむ心から 我もおもひに燃えぬべらなり